「すぐお前より強くなるっつーの!」


「ワア、タノシミー」


「思ってねぇだろ、絶対」



茶色い髪に雨粒を垂らしながら、唇を大きく曲がった。


ブツブツ独り言を連ねる朔を、伏し目がちになぞる。





『秘密を、聞いちゃったんだ』




朔も、知らない。

私とあいつの、秘密。



あぁ、できることならいっそ、忘れてしまいたい。


忘れられたら、どんなにいいだろう。




あの秘密を聞かなかったら、あんなことにはならなかったのかもしれない。



描いた「もしも」は、濁った雨にかき消されてしまう。





雨がだんだんと激しくなってきた。


これ以上雨に濡れて、風邪を引いてしまう前に、私と朔は屋上前の踊り場へ避難した。