弘也が階段の方に駆け寄って、カバンからスマホを取って、通達されたメールを確かめる。


繁華街にいた女子を片っ端からナンパして、デートのお誘いのメールが届いたのかな。



すると、弘也の笑顔が引きつった。



「弘也?」

師匠が呼びかけても、応答はない。


どうしたんだろう。




「チッ、親がメアド教えやがったのか」


え?



弘也のいる方から、弘也らしくない、殺伐とした怨言が聞こえた気がしたけど……。


聞き間違い、だよね?



今もなお、通知音が続いてる。


送信者さん、どんだけメール送ってるんだよ。




直後。



――バキッ。


いっそ清々しいほど鈍い音が響いたと思ったら、通知音が止んでいた。




「まだ赤い糸なんてもの信じてんのかよ。きっも」





「……あ、あの、弘也?」



誰こいつ、と思わずにはいられないくらい無情な弘也に、私はおずおずと窺う。


弘也の手には、怪力で真っ二つに壊されたスマホが。