やめて。 触らないで。 “あの人”の手でも副総長の手でも、お母さんの手でもないこの手は、大嫌いだ。 嫌だ。 嫌だ。 嫌だ! 「嫌っ!!」 叫びながら起き上がり、冴えた目を陰らせる。 はあはあ、と肩で呼吸をしながら、血の気が引いた真っ青な顔に滲む汗を拭った。 枕元に置いてあった目覚まし時計を、一瞥する。 時刻はまだ午前4時前。 だんだんと悪夢が消えていき、何にこんなに焦燥していたのか、虚無感に襲われる。 でも、前髪には、誰かに撫でられた感触がわずかに在った。