いつから、寝れなくなったんだろう。


神雷を出て行ってからだろうか。



あいつらの騒がしさに慣れてしまって、こんなにも静かだと逆に寝れなくなった。




苦しい。

でも、苦しんじゃいけない。


全てを置き去りにしたのは、自分なのだから。




裏切り者に成り下がった俺は、心境を変えるために、腰まであった髪を男らしくばっさり切った。



おかげで、なんだか体が軽い。


髪型ひとつ変えただけで、取り巻く空気感も変わった気がした。




「……はぁ、やっぱ寝れねぇ」



呟いた声は、すぐに蒸発する。



ため息を吐きながら、イヤホンを耳に付けて音楽を流した。


弘也からおすすめされた、インディーズのバンドの曲だ。



思えば、バンド好きになったのは弘也がきっかけだった。




激しくも繊細な曲に、瞼を閉じていく。


不思議だ。

あんなに眠れなかったのに、この曲を聴きだした途端、眠気がグワッと押し寄せてくる。