いくらなんでも過小評価しすぎなんじゃ、と銀が反論する前に、朔は口を開いた。



「けど……いや、だからこそ、あいつを追いかけたくなる。そんな、最強で不思議な奴だ」


「総長は、あいつを目標にしてるんすか?」


「目標なんて大層なもんじゃねぇよ。願望、つーか希望?」



上を見上げた朔の視界に映ったのは、澄みきった大空だった。


手を伸ばせば届きそうだと勘違いしそうなくらい、近くに感じる空に伝えるように低めの声を泳がせる。




「俺は、あいつの隣に居てぇから、強くなろうとしてるだけだ。そのために不良になって、総長まで登り詰めた」


「それって……」


「――つまり、そういうことさ」





青春を巻き込んだ風が、朔の元を通り過ぎていった。