「もう1人の方に決まってるじゃないっすか」


「あぁ、幸珀の方ね」



すると、朔が唐突に喉を鳴らして笑い出した。


銀はなぜ朔が笑ったのかわからなくて、眉をひそめる。




「幸珀が弱そう、か。だよな。普通はそう思うよな」


「え?」


「でも、実際は正反対なんだよなぁ」


「正反対?……あいつ、強ぇんすか?」




信じられなそうに口をパクパクさせる銀に、朔は目尻を下げながらまた笑った。


歩く度に伸びていく影が、ひどく切なげだった。



「すんげぇ強ぇよ。あいつは、俺よりもよっぽど強い」


「総長よりも……?」


「ははっ、そうだ。あいつにとって、俺なんかはただの雑魚だ」