私の成績について深刻に悩んでいる小泉パパの説教が、ようやく一区切りついた。


職員室にある時計は、ちょうど5時半を示している。



もうこんな時間!?


早くしないと、桃太郎のケーキが皆に奪われちゃう!



「小泉パパ、説教終わった?終わったよね!?」


「ま、まだ終わってな……」


「終わったんだね、わかった。私、用あるからもう行くね!さようなら!」



私は早口で一気にそう言って、無理やり押し切った。



「あっ、おい……!」



小泉パパの呼び止める声に耳を傾けずに、逃げるようにこの場をあとにする。


私が職員室を出る時、とある男子生徒とすれ違った。




「ったく、仕方のない奴だ」


「小泉先生、ノート提出しに来ました」


「おう、十蔵寺。ん、確かに受け取った」


「あの、さっきの女って……」


「ん?」


「……いえ、なんでもありません」




男子生徒は、私に関して探るような言い回しをしかけた寸前で、言葉を飲み込み口をつぐんだ。