誰も知らない彼女

そんな最悪のタイミングで教室のドアがゆっくりと開けた。


ガラガラガラッ。


「おはよう……」


この声はえるだ。


えるは教室に入ってくるなり、ギョッと目を見開いて私の背中に隠れた。


「ひっ……! な、なにあれ……」


えるが驚くのも無理はない。


自分が教室に入ったときにクラスの子を蹴る由良を見て驚くなというほうが無理だろう。


私のうしろに身を隠してぶるぶると震えるえるに、私はこう説明した。


「私もよくわかんないけど、気づいたらこんなことになってたの。もしかしたら由良はよほどストレスがたまっていたのかもしれないね」


いつからこんな状態になったのかは説明できなかった。


だって、それを説明したらまた自分の心にダメージを受ける可能性があると感じてしまったから……。


必要のないダメージを受けている自分が、よくわからない。


なぜ必要のないダメージを受けるんだろうと考えていると、不意に由良と目が合った。


他のクラスメイトには見えない火花のようなバチッとしたなにかが飛んできた気がして、びくっと肩を震わせてしまう。


それに、こちらを見つめる由良の顔がとてつもなく怖い。


由良は私の姿を視界に認めた瞬間、今まで自分が蹴ったり踏んだりした子から離れて、信じられないスピードでこちらに駆け寄ってきた。


その勢いに、私は目を見開いた。