「美咲の事が好きって人は結構沢山いたんだよね。だけど、それが誘拐にまで発展するような感じはしなかった」


犯罪にまで発展した感情を持っている生徒がこの中にいるとは思えない。


それに、いくら知り合いだって黙って誘拐されることはないはずだ。


美咲だって途中でおかしいと感づき、逃げる事を考えるだろう。


だけど相手から逃げる事ができなかったのだ。


どうあがいても、無理だったのだ。


「美咲を連れ去ったのは、あたしたちよりももっと大人で、計画性のある人だと思う」


そう言うと、千夏が一瞬息を飲んだ。


あたしの言わんとすることを理解してくれたようだ。


「あの場にいた大人はたった数人。その中で美咲が抵抗も見せずについていく大人は、きっと1人しかいない」


「もしかして、相原先生?」


涼太が目を見開いてそう言った。


見開きすぎて今にもこぼれ落ちてしまいそうだ。