「そんな優しい壱夜くんだから、流れてる噂を耳にした時は、“腑に落ちない”って自然に思ったの。だって、適当な因縁つけて暴力振るうような人なら、私が不良に絡まれてた時もアイツらを即行で殴ってたんじゃない?」


「…………」


「恐喝も、するんだったら私相手にしてるでしょ。不良から助けてやったとか言って、金銭要求したりとかさ。それから、万引きだって……」


「もういい。アンタの想像論…長くなりそうだし」


私の話を遮る壱夜くんは、眉間にシワが寄っていた。


「言っとくけど、今のは想像論なんかじゃないよ?私の目で見て、心で感じたリアルな碧瀬論なんだから」


真面目に反論したはずなのに…。


「フッ、何が“碧瀬論”だよ。おかしな奴」


なぜか、壱夜くんからは呆れたような笑いが零れる。


そんなに変なこと言ったつもりは無かったんだけど…。


首を傾げつつ、不機嫌そうな顔されるよりはマシかな…なんて思っていた時だった。





「……だけど、少し嬉しかった。ありがとな」