父さんから電話が掛かってきた時。


出ようとしなかった俺に、莉彩は今すぐ出るようにと珍しく声を荒らげた。


すぐに出れなくても後で掛け直してる旨を話したら、一瞬…莉彩の目が悲しげに揺れて…


『でも、今は今しかないんだよ…。一度、通り過ぎた時間は、どんなに願っても戻れない…』


そう言った。


独り言みたいなものだから気にしないでと莉彩は笑っていたけど、その時の笑顔は作られたもののようで少し不自然だった気がする。


そのあとはいつも通りの莉彩だったから、特に気に留めることもなかったけど…。


そうか。


あの時の言葉は、過去の後悔から出たものだったんだ…。


もしかしたら、莉彩が凄まじくお節介なのは、それが原因なのかもしれない。


後回しにしてしまったが故に、大事な人に言いたかったことを言えなくなってしまったから。


他の人に同じような後悔をさせたくなくて…。


自分のことよりも他人のことを優先か。


「……ったく」


どんだけ優しいヤツなんだよ、お前。