「柚花ちゃんか、ビックリしたよ。久しぶりだね。メガネをかけてなかったから、一瞬誰だかわからなかった」


彼女は宮崎や和果子、もちろん高知にも後輩にあたる現役中学生。

小学生の頃から俯きがちなところは変わらないが、長年愛用していたメガネを取り払ったその姿は、昔とは随分印象が違っていた。


「最近、変えたんです。ちょっと……頑張って、みようかなって」


はにかむように笑う柚花につられて、宮崎も笑みを返す。

“頑張る”というその言葉が何を意味しているのかはわからないが、それでも柚花の印象がだいぶ違って見えたのは事実だった。

昔はいつも地味な色の服ばかり来ていたのが、今日は明るい色合いの花柄のワンピースを着ていることからも、その頑張りが伺える。


「この時間にここにいるってことは、柚花ちゃんも有志?」

「あっ、はい。……わたしが一番、ここから家が近いので必然的に」

「なるほど、近すぎるのも考えものだね」

「考えものですね……」


和やかに笑い合って、二人はしばらく校舎を眺める。

すると、外壁に貼り付けられた時計の針がカチッと動いて、懐かしい鐘の音が鳴り響いた。