「どうして教えてくれなかったの!?」

数か月後、あの日彼との別れの理由(わけ)を聞き出そうとした友人が怒りをあらわにした様子で教室に入ってきた。

それは高校受験を間近に控えた日のこと。

つかつかと私の前に歩いてくる。

「ねぇ、N高受験するってホント?」

周りの空気がざわつく。

仲の良かったグループではただ独り、遠方の高校を第一志望に選んだ。

「うん……」

はっと息を呑む音がきこえ、やがて落胆の色が見える。

不思議だ。
そういう色だけはこっちの世界でもちゃんと見える。
むしろ、そういう色ほど見えすぎるくらいだ。

「いっつもそうだよね。なんにも教えてくれない。友だちだって思ってたのはウチらだけだったんだね」

ボロボロと涙を流す友人。
それをみんな同情した目で見てる。

同情してほしいのは私のほうなのに。
私には明るい色が見えなくなったのに。

誰にもわかってもらえない。