パンドラの箱が開いてしまった。
私の世界から色がなくなってしまった。


彼とはうやむやに別れた。

女子ってどうしてなんでも共有しなきゃ気が済まないだろうね。
あの境界線を超えられないまま、地中でひっそりと息をすることに決めた私にとってそれは苦痛にほかならなかった。

二学期があけて通常の授業に戻った頃、仲のよかったグループから放課後教室で話そうと言われた。
すぐに彼との事だとわかった。

「ねぇ、どうして別れたの?」

グループ内で一番仲のよかった友人が案の定詰め寄ってきた。

「ごめん……」

それしか言えない、言える訳がない。

「なんで?ウチら友だちじゃん?」

友だちだからこそ言えないこともあるんだよ。

なんだかみんなキラキラと輝いていた。
モグラにだってはっきりとその輝きが見てとれた。

少し前まではきっと私もそんな世界の住人だった。
だけどもう戻れない世界。

地中で暮らしていなければならない存在なんだ。

「……そっか。そうだよね、言えないこともあるよね。言えるようになったら教えてね」


その日を境にはっきりと境界線が引かれた。

私と彼女たちの間には見えないけれど、はっきりとした線が。生きながら輝ける者と、息をしながらひっそりと生きる者と。