プレゼント交換が終わり、二人は床に就くことにした。


しかし、問題が発生した。


この二人のいる部屋にある寝具は、ダブルサイズのベッドが一つだけ。


(うぅ、緊張してきた……)


依人は勿論、男の人と寝ること自体初めてで、縁は緊張で石像のように固まっていた。


ちらりと既にベッドに横たわる依人を見るが、指一本すら動かせなかった。


(あたしのバカ……何も考えてなかったよ。まだ心の準備がぁ!)


縁はようやく自分のした大胆な行動に気付いたのだ。


クリスマスイブにお泊まりは、まさにオトナの関係に至るにはうってつけのシチュエーションだ。


当時の縁は、ただただ依人と一緒にいたいがために宿泊を提案したのだ。


依人が初めての彼氏の縁は、勿論未経験だ。


(どうしよう、どうしよう)


そんな固まったまま狼狽える縁に見兼ねて、依人は声をかけた。


「縁、そんなに固くならないで? 俺は縁の嫌がることは絶対しない」

「せんぱい……」

「俺は縁の心の準備が出来るまでちゃんと待つから」

「ご、ごめんなさい……あたし、まだ怖いです」


縁は申し訳なさに涙ぐみそうになりながら、依人に謝った。


「分かったよ。ほら、泣かないでおいで? 風邪引いちゃうよ」

「はい、し、失礼します……」


依人の言葉に背中を押されて、縁は意を決してベッドの中に入った。


依人は宣言通り、十五センチほど距離を取ってくれた。


(先輩は優しい。すっごく優しい……男の人は初めてって面倒くさがるらしいのに)


縁は依人の気遣いに泣きたくなった。


「面倒くさくてごめんなさい。もう少しだけ、待って下さい」

「面倒くさいなんて思ってないよ。縁を大事にしたいからいくらでも待てる」

「先輩……」


縁の中で愛おしい気持ちが溢れ出していく。


きゅんと高鳴り続ける鼓動を抑えられなくなり、衝動的に依人に抱き着いた。


「縁?」

「あの、ぎゅってくっついてもいいですか……?」


真っ赤な顔で潤んだ目を依人に向ける。


依人は一瞬目を丸くさせたが、柔和な笑みに変わり、縁の華奢な身体を包み込むように抱き締めた。


「いいよ」


ちゅっ、と額に口付けを落とされて、縁の鼓動は今にも爆発寸前だった。


(ドキドキするよ……でも、先輩の体温が心地よくて離れたくないの)


縁はしばらく緊張していたが、次第に微睡んでいき、依人の腕の中で穏やかな寝顔を見せた。





初めて一緒に過ごす夜。
依人の深い愛情に触れて、縁にとって忘れられない夜となった。



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