その恋、記憶にございませんっ!

「その婚姻届、見ましたか?」

「見ましたよ」

「ちゃんとサインを確認しましたか?」

「……してないです」

 既に四つに折り畳んだ状態で、蘇芳が手にしていたからだ。

 だが、紙が薄いので、文字がちゃんと書き込まれているのも、印鑑が押されているのも透けて見えていた。

「唯様、貴女は恐らく、騙されています」

 宮本はそう進言してくる。

「よくわからない相手と結婚させられそうになって、ストレスの溜まっている蘇芳様にからかわれているだけです。

 なにかされたのか、されてないのかもわからない、恋愛経験のない世間知らずの小娘を騙すなど、あの口八丁な蘇芳様にかかれば、造作も無いことですから」

 おい、こら、宮本……。

 世間知らずの小娘ってなんだ、と思っていた。

「はっきり言って、貴女なら、私でも騙せます。

 今まで騙した誰よりもチョロイ感じがします」

 もしもし?