その恋、記憶にございませんっ!

 ……すみません。
 それの何処が大丈夫なんですか? と思っている唯を、蘇芳はすぐ後ろの壁に押し付け、

「心配するな、これが本当のお前のファーストキスだ」
と言ってくる。

「初めてじゃないですよ?」

 蘇芳の顔を間近に見ながらそう言うと、蘇芳の動きが止まる。

「じゃあ、俺とのファーストキスだ。
 ――って、何処でして来やがったっ!」

「なんですか。
 その恨みがましい目はっ。

 貴方に出会ったの、つい、最近なんで関係ないですよねーっ、とは思ったのだが、
「でも、別に望んでのことではありません」
と弁解してみた。

「翔太さんと婚約という話になったとき、あの人、バルコニーに私を連れ出して、勝手にキスして来やがったんです」

 私は今まで身ぎれいに生きてきたおのれを呪いました、と言うと、蘇芳は迷わず言ってくる。

「わかった。
 殺しておこう」

 桝谷翔太だな、と殺し間違いのないようにその名前を呼んだ。