その恋、記憶にございませんっ!

 




「そうか。
 あの男、お前に自分が好きだという素振りを見せてなかったのか。

 じゃあ、わざわざお前に教えてやる必要はなかったな」

 夜、またもケーキを持ってきた蘇芳がそんなことを言ってくる。

 いやー、なんか当然のようにやってきますよねー、と皿とフォークを出しながら唯は思っていた。

「今日もたくさんにありがとうございます。
 あの、宮本さんたちも呼んできたらどうですか?」
と昨日のも食べ終わっていないのに、また大量にケーキの詰まった箱がやってきたので、思わずそう言うと、

「いや、今日は、本田が足止めをくらわしてくれているはずなんだが。

 ……まあ、二千円でどの程度の効果があるかだな」
と呟いている。

 二千円? と思いながら、昨日の宮本の真似をして紅茶を淹れてみたが、もちろん、同じようにはいかなかった。

 ただ、自分が淹れたのにしては、かなりマシになっている。