その恋、記憶にございませんっ!

 自分の身内が迷惑をかけたのを謝っている感じだな、と少し寂しく思う。

 あの男より自分の方が唯にとって、他人のポジションに居る気がして。

 だが、それより、気になったのは、
『あとでよく言っておきます』
の一言だった。

 またお前の部屋に来るのか? あの男。

 それでいいのか? 唯。

 っていうか、お前、翔太はどうした、と思ったとき、何故か、三上蘇芳の顔が頭に浮かんだ。

 いきなり、自分を崖下に突き落とした蘇芳は、おのれは決してそこから下りて来ず、何故か偉そうに杖をつき、自分を見下ろし、言ってきた。

『桝谷慎吾!

 何故、そんな気に食わない婚約者なんぞに頼るんだっ。

 そもそも、翔太が強引に唯と婚約したと聞いたとき、何故、会長に待ったをかけなかった!

 お前もおこぼれや偶然のチャンスを待ってるだけじゃなく、おのれの力で唯をもぎ取ろうと努力してみろっ』

 そう自分を叱咤してくる。

 はいっ、コーチッ、と妄想の中で、つい、言いそうになったが、そもそも、あいつが敵だった……。