その恋、記憶にございませんっ!

 でも、今度こそ、唯だ!

 あの男を送っていったというか、叩き出してきたらしい唯が戻ってきた。

「あ、慎吾課長っ。
 お疲れさまでーすっ」
とやけに機嫌良く言ってきた。

 お疲れ、と言ったあとで、
「あの、今日はお疲れさまでした。

 これ、みんなで食べてね。
 貰い物だけど」
とクッキーの箱を渡すと、唯はことのほか、喜んでくれた。

 やっぱり、これにしてよかったな、と思っている間に、唯は、では、と戻ろうとする。

 うわっ、ちょっと待ってっ、と思いながら、
「あの」
と呼び止めた。

「さっきあの……三上さんが、僕が唯のことを好きだとか言ってたんだけど」
と言いかけたところで、(さえぎ)るように唯が言ってきた。

「あー、すみません。
 あの人、たびたび、よくわからないことを言うんですよ。

 あとでよく言っておきますね。

 クッキーありがとうございましたっ」
と頭を下げ、足早に立ち去ってしまう。

 すみません、か。