その恋、記憶にございませんっ!

 



 唯が自分のフロアに戻ると、慎吾がエレベーターホールで待っていた。

「あの、今日はお疲れさまでした。

 これ、みんなで食べてね。
 貰い物だけど」
と慎吾が近くの店の美味しいと評判のクッキーを渡してくる。

「えっ。
 ありがとうございます。

 みんな喜びますっ」

 此処のクッキー絶妙の甘さで、サクサク感も良くて、誰かが手土産で持ってくるたび、みんなで拍手喝采してるからな。

「ありがとうございます。
 ではっ」
と去ろうとすると、慎吾がまた、

「あの」
と呼び止めてきた。

 足を止め、振り返ると、

「さっきあの……、
 三上さんが、僕が唯のことを好きだとか言ってたんだけど」
と言いかけるので、

「あー、すみません。
 あの人、たびたび、よくわからないことを言うんですよ。

 あとでよく言っておきますね。

 クッキーありがとうございましたっ」
と頭を下げ、唯は足早に立ち去った。