その恋、記憶にございませんっ!

 どうでもいいが。

 どうして? いつから、お前が俺たちの上に立ち、チャンピオンに?

 完全にこっちが挑戦者の扱いで、かかって来い、と言われている感じなのだが。

 唯の正式な婚約者であるはずの翔太までも。

 駄目だ。
 こいつと真正面から話しても、と慎吾は気がついた。

 こいつの話術とわけのわからない迫力に吞み込まれるだけだ。

 唯もこれにやられたのだろうかな、と思う自分の前で、唯は、

 えーと。
 この人どうしたら……? という目で蘇芳を見上げている。

 このままでは唯が持っていかれてしまうっ、と思った慎吾は、蘇芳に言った。

「お前そんなわからないことばかり言って、唯を煙に巻いたんだな?
 お前が強引に話を進めているだけだろう」

 すると、
「違う」
と言った蘇芳は、子どもに言い聞かせるように言い出した。

「俺が唯をじゃなくて、唯が俺の手を引いて――」

「はいっ、蘇芳さんっ!
 はいはいっ、帰りますよーっ」

 唐突に声を上げた唯が強引に打ち切るように言い、蘇芳の大きな手をつかむ。

 なんのやましいことがあるのやら。

 ……いざとなると、やはり女の方が強いようだ、と思い、見ると、何故か蘇芳の方がちょっと赤くなり、唯に引っ張られながら出て行った。

 意外だ――。