その恋、記憶にございませんっ!

「お前、唯が好きなんだろう?」

 唯がそこに居るのに、蘇芳はそんなことを言ってくる。

 ひーっ、と思ったが、それとは別に気になる視線もあった。

 蘇芳の後ろの机の上を片付けていた瑞穂が目を輝かせて、こちらを見ている。

 すぐに噂が広まってしまいそうだ。

「慎吾。
 お前は何故、その唯の婚約者とやらを使って、俺と張り合おうとする。

 そいつは、お前よりいい男なのか?

 唯が好きなら、堂々と俺に向かって名乗りを上げ、戦えっ」

 なんか偉そうな奴に、戦えっ、とか命じられると、戦隊モノなどにはまっていた子どもの頃の血が騒ぎ出し、思わず、喜びそうになってしまう。

 だが、蘇芳はこちらを見据え、言ってきた。

「俺は受けては立たんが」

「……立たないんですか?」
と唯も思わず、と言った感じで訊いていた。

 蘇芳は唯を振り向き、
「だって、戦うまでもないだろう?
 お前は絶対に俺を選ぶんだから。

 不戦勝だろ」
と言って、

「意味違います、それ」
とすげなく言われていた。

 この男、会議中は賢いのかと思っていたが、日常生活では莫迦なのか……?