その恋、記憶にございませんっ!

 三上の跡取りの結婚となると、祝いを贈ったりしなければならないからだろう。

「してませんーっ」
とそちらを窺いながら、唯は大きな声で否定する。

「なにを言う。
 ちゃんと婚姻届にはお前のサインもしてあるぞ」

「し……したかもしれませんけど、無効ですーっ」

「では、詐欺だな」

「は?」

「サインしたが、無効とか。
 お前さんざん俺をもてあそんで、結婚詐欺か」

 誰がもてあそんだんですかーっ、と唯が飛び跳ねている。

 この男……話の展開が読めなくて怖い。

 お坊っちゃん育ちのせいか? と思いながらも、慎吾は言った。

「三上さん、唯には婚約者が居るんですよ」

 だが、知ってる、と蘇芳は言う。

 腕を組み、こちらを見下ろし、言ってきた。

「知ってはいるが。
 何故、お前が鬼の首をとったかのように、それを言う?」

「え……」