その恋、記憶にございませんっ!

 そういうのって何処からともなくバレるものだよな、と思っていた。

 式場とか衣装とか美容院とか、親戚とか。

「……もしかしたら、直前で駄目になるかもと思って言わなかったんだけど」
と言うと、

「なにそれ」
と瑞穂は笑う。

「心配性ねえ、唯」
と言われたが。

 いやいや、駄目になりたかったのだ。

 それが無駄な希望だと知りつつも。

 式場から、誰かが自分を連れ去ってくれるなんて思えないし。

 自分から断るのも、逃げ出すのも桝谷会長に世話になっている手前、難しい。

 わかってはいたが、最後の希望にすがり、みんなには言わないでいたのだ。

 そんなことを考えていたとき、ふと、蘇芳の顔が頭に浮かんだ。

 最後の希望か――。

 ……あれ、希望か?

 二、三度しか顔を合わせていないのに、結婚したいと言い出した翔太より困った人のような気がするのだが。