その恋、記憶にございませんっ!

 頭にタンコブ出来たの、昨日も今日も、貴方のせいなんですけどーっ!

 っていうか、都市伝説かっ、と振り向くと、蘇芳の後ろに、会議に出る樹と千花が立っていた。

「唯……」
と慎吾が言いかける前に、樹が訊いてくる。

「唯、この人、知り合い?」

 そう言いながら、樹は自分より大きな蘇芳を見上げていた。

「俺は唯の結婚相手だ」

 ええっ? と慎吾まで、樹たちと一緒に声を上げる。

 やめてーっ。
 そういう嘘情報ーっ!

 此処、会社ですっ。
 ノーッ! と怪しげな外国人のように心の中で叫びながら、せめて自分だけは聞くまいと、無駄な抵抗をし、唯はおのれの両耳を覆ってみたが、滑舌のいい蘇芳の声はするりと耳に入ってくる。

「唯の婚約者の三上蘇芳だ。
 飛行機が飛ばなくて、出張先から戻ってこられなかった部長の戸田の代わりにやってきたMIKAMIの平社員だ」

 そのあまりに堂々とした物言いに慎吾、樹、千花の三人は固まっていた。

 ヒラシャイン?
 ヒラシャインって、どんな役職だったっけ……?

 っていうか、ヒラシャインって、自分から名乗る奴、居るんですね、課長。

 っていうか、部長の代わりにヒラシャインってどういうことなんでしょうね……?

 三人の目には、それぞれそんなことが書いてあった。