その恋、記憶にございませんっ!

「なんだったの?」
とスクリーンの位置を動かしながら問うてくる慎吾を、

「いえ、受付からの定時連絡です」
と笑顔で誤摩化した。

「あ、私、予備のタブレット、取ってきますね」
とドアを開けようとした唯の目の前にそれは居た。

 戸口を覆うほどの大きな男。

 その威圧感に押されたからではなく、唯は反射的にドアを閉めていた。

「どうかした?」
と慎吾が振り返る。

「えっ? いえ。
 すみません、今、なにか……」

 幻覚が……と言おうとしたとき、そのドアが勝手に開いた。

 ゴツッと内開きだったそれで唯は後頭部を打つ。

 うっ。
 昨日、軽くタンコブが出来た場所にっ、と頭を押さえてしゃがむと、

「どうした、唯。
 大丈夫か? お前は頭を打つのが好きだな」
という声が聞こえてきた。

「知っているか。
 一度頭を打つたびに、三百の脳細胞が死ぬという都市伝説があるのを」

 そう蘇芳は言ってくる。