その恋、記憶にございませんっ!

 




「行ってらっしゃいませ、蘇芳(すおう)様」

 翌朝、玄関で宮本に鞄を渡され、受け取ったあと、蘇芳は宮本を振り返り言った。

「お前、まさか、今日も俺の後をつけたりしないよな?」

 そのセリフに被せるように、宮本が言ってくる。

「まさか、今日も唯様のところに伺われたりはしないですよね? 蘇芳様」

「……いけないのか」

「いけないのですか?」
とそれぞれがそれぞれの問いかけに向かい、答える。

 駄目だ。
 こいつとは相容(あいい)れない、と思いながら、
「行ってくる」
と玄関を出る自分を、宮本はいつものように莫迦丁寧に頭を下げ、

「行ってらっしゃいませ」
と見送ってくれた。

 いい執事なんだが……。

 いささかやりすぎな面もあるからな、と思いながら、広い庭を自分の車があるガレージに向かい歩いていると、途中で車を洗っている本田に出くわした。