その恋、記憶にございませんっ!






 あ、

 あーっ、びっくりしたっ!

 唯は恥ずかしくて顔が上げられず、頭が痛いふりをして、その場にうずくまっていた。

「じゃあ――
 おやすみ、唯」
と言って蘇芳が出て行く。

 どうしよう、初めてだ、と唯は思っていた。

 男の人に頬にキスとかされたの、初めてだ。

 なんだか口にされるよりも、どきどきするかも、と思いながら、三人の乗った車の音が消えても、まだひとり、小なセメント張りの玄関にしゃがんでいた。