その恋、記憶にございませんっ!

 



 すみません。
 以後気をつけます、と唯は宮本にペコペコ頭を下げている。

 そんな二人のやりとりを蘇芳は紅茶を飲みながら、横目に見ていた。

 宮本め。
 気がつけば、いつの間にか、唯を名前で呼んでないか?

 いや、いずれ、唯は俺の名字になるんだから、名前で呼ぶので正解なのだろうか?

 だが、宮本は俺と唯との結婚を認めているとは思えないんだが、と思っている間に、宮本は紅茶を飲み終わり、さっさと下げて洗うと、テーブルの上まで拭いたあとで、

「では、失礼致します。
 行きますよ、蘇芳様」
と言ってくる。

「俺は帰らないと言ってるだろう」

 そう意地を張ってみたのだが、宮本はこちらを見、呟くように言ってきた。

「……本田が外で待っております。
 この寒空の中、震えて。

 我々がお茶を飲んでいる間も本田はひとり。
 ずっと、寂しく外で待っております……」

 蘇芳の頭の中では、本田がろくに着るものもなく、雪の中震えていた。