その恋、記憶にございませんっ!

 金も地位もあるのだから、夫に愛人が居ても仕方がないとか。

 マダムたちは若い男を囲っていてもオッケーだとか、そんなことは彼らも思ってはいない。

 その点では自分たちと変わりないと思うのだが……。

 まあ、変わってる人間が多いのは確かだけどな、と思いながら、宮本はチラと時計を確認する。

「そろそろ蘇芳様を帰らせよう。
 お二人とも明日の仕事に差し支えるからな」

 どんな金持ちだろうと、何様だろうと、職場に行けば、ただの一会社員だ。

 きちんと働いていただかないと、と思っていた。

 双眼鏡を置き、車を降りようとすると、そこだけは、ちょっと同情気味に本田が言ってきた。

「えー、まだ九時ですよー。
 放っておいてあげましょうよー。

 蘇芳様、せっかく行ったのに、まだなにもしてませんよ、きっとー」

 莫迦め。
 なにかされたら困るから邪魔してるんだろうが、と思いながら、宮本は外に出た。