その恋、記憶にございませんっ!

 はいっ、と笑って言うと、そうか、とちょっと嬉しそうだった。

「いいものだな。
 女に食べ物を貢ぐというのは」
と言い出す。

「こうして、太古から男は女に貢いできたんだろうな。
 危険を冒して、獣を狩って。

 それで自分がどんな目に遭っても、美味そうに肉を喰らう女を見たら幸せになれそうな気がする」

 俺も体験してみて、ようやくわかったぞ、とのたまう蘇芳に、

 いや……貴方、駅の近くで、お金出してケーキ買ってきただけですからね、と思っていた。

 何処に危険があったんだ……。

 交通量が多かったとか? と思っていると、
「ところで、慎吾って誰だ?」
といきなり思い出したのか、訊くタイミングをはかっていたのか、そう訊いてくる。

「ああ、子どもの頃から知ってる会社の人です」

「その知り合いが、なんで、こんな一客、十万もするような器をぽんとくれるんだ?」