その恋、記憶にございませんっ!

「いえいえ。
 人って、ケーキ買うとき、あ、私、これ食べたいなとか思うものじゃないですか。

 蘇芳さんは、どれがいいと思って買われたんですか?」
と言うと、

「いや、端から買ったからよくわからない」
と言い出す。

 ……そうでしょうね。
 数が多過ぎですよ、と思いながら、

「宮本さんとか外にいらっしゃってるんじゃないですか?
 宮本さんたちもご一緒にどうですか?」
と言うと、何故だ……、と言う。

「いやあ、あの人、なんか貴方を見張ってそうだなと思って」
と後ろの窓を振り返り言うと、蘇芳は珍しく不安そうな顔をした。

 思い当たるところがあるのかもしれない。

「居たとしても呼ぶな……」
と言うので、そうですか、では、お言葉に甘えて、とつやつやのフルーツが溢れんばかりにのせられているタルトを取った。

 うん、美味しい、と思いながら笑うと、自分は食べずにこちらを見ていた蘇芳が、
「美味いか?」
と訊いてくる。