その恋、記憶にございませんっ!

 すると、蘇芳は、何処かへ電話をかけ始めたようだ。

「ああ、宮本か」

 ちょっと待てーっ!
 鍵を破壊されてはかなわない、と唯は立ち上がり、玄関を開けた。

「おお、唯。
 居るじゃないか」
とどうやら発信してはいなかったらしいスマホを耳に当てたまま、蘇芳は笑う。

 いや……今、明らかに私に聞こえるように言ってましたよねー、と思いながら、溜息をつき、
「どうぞ」
と言った。

 こんなところに、こんな人に立っていられては、目立ってしょうがないからだ。

「唯、そう簡単に男を部屋にあげるなよ」
と言う蘇芳に、じゃあ、お帰りください、と思ったが、ちょうど今、見ていたフリーペーパーに載っていた店のケーキの箱を差し出され、思わず、受け取る。

 それにしても、タイミングが良すぎるが、
「実は、監視カメラとかつけてないですよね?」
とそんな最新機器の似合わぬ部屋を回しながら、言うと、

「そんなこと俺がするか。
 宮本じゃあるまいし」
と言ってくる。