その恋、記憶にございませんっ!

 しかし、そんなこんなで、自分がぐずぐずしている間に、もう唯と翔太の挙式は迫ってきている。

 どうにかしなければと思いはするが、自分から女性に言い寄ったこともなければ、日常生活において、なにかが欲しいとねだったこともない。

 自分がなにか言う前に、常に親や周りから与えられてきたからだ。

 そんなお坊ちゃん育ちの自分に、翔太から唯を奪い取るなんてことは出来そうにもなかった。

『慎吾さんでいいよ』

 さっき、自分は唯に向かってそう言った。

 あれ、だから、僕も普段通りに、『唯』って呼んでいいかなって言う意味なんだけど。

 わかってくれてるのだろうかなーと思いながらも、なにも言えないでいた。

 こんな出遅れる自分だが、まだ希望は捨てていない。

 唯がみんなに、近々結婚するという話をしていないからだ。

 まだ、唯が断るかもしれない。

 直前だろうと、断るかもしれない。