「さ、財布忘れた……」
いざ、みんなでコンビニへ、と思ったそのとき、唯は財布がないのに気がついた。
社食はICカードで食べられるので、うっかりしていたのだ。
「貸すよー、唯」
と瑞穂が言ってくれるが、
「いやー、いいや。
小銭がないから。
ついでに崩したいし。
猛ダッシュで取ってくるから、行っといてー」
と言って、了解ーと言われる。
一度、部署まで戻って、急いで外に出た。
すると、ちょうど、社食のある社屋から、慎吾が出てくるところだった。
「あ、慎吾さ……
慎吾課長、お疲れ様ですー」
と言うと、
「いや、別に慎吾さんでいいよ」
と笑いながら、慎吾は唯の近くにあった自動販売機まで歩いてくる。
「いえ。
会社ですから」
と唯は言った。
実はこの会社の土地は、もともと前田家の持ち物だった。



