その恋、記憶にございませんっ!

「あんな若くて課長だもんねー」
と誰かが言った。

 まあ、課長は仕事出来るもんな。

 謙虚だし、と思いながら、色素の薄い綺麗な顔をした慎吾を眺める。

『莫迦め。
 俺は平社員だ』

 ヒラシャインというのは、なにか重要な役職を表す言葉だったろうか、と一瞬、疑ってしまうほどの尊大な態度だった。

 あれはもう、生まれついてのもので、どうしようもないんだろうな、と整った濃い顔の男を思い出し、笑ったとき、トレーを手にした慎吾がこちらを見ているのに気がついた。

 ぺこりと頭を下げると、慎吾はこっちに来かけたが、
「課長ー、こっち、空いてますよー」
と気のいい部下に呼ばれ、行ってしまった。