その恋、記憶にございませんっ!

 蘇芳とともに、唯が後部座席に乗り込んだとき、つい、窓の外を見ながら、ぼそりともらしていた。

「……莫迦殿という言葉はあるのに、莫迦姫という言葉がないのは残念なことですね」

 すると、後ろから、
「すみません。
 今、なにか言いましたーっ?」
と唯が叫んでくる。

 姫のくせに、意外と耳ざといようだった――。