その恋、記憶にございませんっ!

 




 朝だ……。

 昔、家族で泊まった部屋だったので、目覚めた唯は、一瞬、時が戻ったのかと思った。

 なんの憂いも知らなかった子どもの頃に――。

 だが、それにしては、戻ったのかな、と思った瞬間、泣きそうになったので、きっと違うんだろうな、とは思っていた。

「おはよう」
と蘇芳がベッドルームの扉を開け、覗いた瞬間、今がいつかを理解した。

 私、社会人!

 仕事っ!

 月曜日ーっ! と唯は声に出して叫んでしまう。

「大丈夫だ、まだ六時だ」
とベッドに腰掛け、蘇芳が言ってくる。

「す、蘇芳さんが居ます……」
と昨夜のことを思い出し、衝撃のあまり、震える声で言ってしまうと、蘇芳は、

「俺じゃない奴がいたら、問題だろう」
と言ってきた。

 蘇芳は、
「朝食はルームサービスにしたぞ」
と言ったあとで、ベッドの下に置かれた、白い折り畳みテーブルを見、

「テーブルもあるし、ベッドで食べるか?」
と笑う。