その恋、記憶にございませんっ!

 広すぎるベッドに小さな折りたたみのテーブルは余裕で乗っている。

 なにか離せなかったのだ。

 離した途端に、一気に蘇芳さんに向かって流されていきそうで――。

 だが、蘇芳はそんな唯を笑って言う。

「いつか子どもが結婚するとき、この話をしよう」

 やめてください……、と思っていた。

 それに、この身は汚されてしまいましたが、心まではまだ、持ってかれませんよ、と頑張る。

 だが、とりあえず、テーブルはもういいかな……。

 そっと離してみたが、長く握りすぎていた手は真っ赤になり、つかんだ形に固まっていた。

 蘇芳がその手に触れ、そっと開いてくれる。

 初めて会ったときのように、唯の手をつかみ、言ってきた。

「唯。
 それ、離したってことは、もういいってことだよな?」

 いやあの、いいも悪いも、貴方、さっきから全然構わず、いろいろしてますよねーっ、と蘇芳を睨んでみせた……

 ……つもりだったが、蘇芳は何故か、こちらを見、笑っていた。