その恋、記憶にございませんっ!

「なんだか怖いな。
 幸せすぎて」

 そう言う蘇芳に、意外だ……と思っていた。

 蘇芳さんでもそんなこと思うのか、と。

「長い人生、いろいろとぶつかることもあるだろうが。

 今の気持ちと幸せが、続くよう努力していこう。

 俺はお前とは一生一緒に居たいから」

 こんなこと思ったのは初めてだ、と言いながら、蘇芳は目を閉じ、唯の頬にその頬を寄せてくる。

 ちょっと泣きそうだったが。

 ちょいちょい気になるセリフもあった。

 ……『お前とは』って、なんですか?

 『こんなこと思ったのは初めてだ』ってことは、思わなかったのはあるんですよね?

 っていうか、此処までの過程、すべて手馴れすぎですしっ。

「どうした、唯。
 なにか怒っているのか?」
と蘇芳がこちらの表情を読んで言ってくる。

「……いえ。
 蘇芳さんが経験豊富過ぎて、もてあそばれてるようにしか思えないのが嫌なんですが」
と言うと、蘇芳は、

「いや、俺もテーブル抱えた女は初めてだが……」
と言ってくる。

 唯はまだ片手で、テーブルの脚をつかんでいた。