その恋、記憶にございませんっ!

「いやですっ。
 って、いつも使ってるってなんですかっ?」
と簡単に持ち上がってしまう安い折りたたみのテーブルの脚をつかんで、唯は抵抗しようとする。

 蘇芳は笑い、
「なんだ、妬いているのか、唯。
 可愛いな。

 違うぞ。
 家に親の客が来て、うるさいときなんかに避難するホテルだ。

 じい様がよくパーティ会場に使ったりするから、いつもいい部屋を都合してくれるんだ」

 さあ、行こう、とテーブルごと、唯をお姫様抱っこする。

 いや、テーブルを持っているのは自分だが。

 それを見た蘇芳が、
「重くないのか? 唯」
と訊いてくる。

「……重たいです」

 でも、離したら、このまま持ってかれそうで怖いんです、と思っている間も、唯はテーブルごと運ばれる。

「この家、鍵とかいるのか?
 あまり意味はなさそうだが」
と言いながらも、建て付けの悪いドアに一応、唯の指示で唯の鞄から鍵を出し、かけてくれる。