その恋、記憶にございませんっ!

「あ……ありがとうございます」

 いやー、ストレートに褒められると、今度は、それほどのものでもないのにと思って、照れるな……と思っていると、
「いや、なんか緊張するんだ」
と蘇芳は言い出した。

「なんでだろうな。
 お前とこの部屋で二人きりになると、たまに緊張する」

 そう言うと、落ち着かなげに辺りを見回し始める。

 ……たまにですか。

「最初に此処に来たときの緊張感を思い出すからだろうかな」

 最初に来たときって、私が貴方をフライドチキンのおじさんだと思って連れて帰ったときですよね。

「なんで貴方と白い服のおじさんを見間違えたんでしょうね」

 別にあんな服も着てなかったのに、と呟くと、
「お前が間違えたんじゃないぞ」
と蘇芳が言う。

「え?」

「お前は一頻(ひとしき)り、白い服のおじさんに向かって話したあと」

 いや、それ、ずっと見てないでください、と思っていると、
「その手をつかんで歩き出そうとしたから、俺が代わりに差し出したんだ」

 お前は前を見て歩いていたから気づかなかった、と言う。