その恋、記憶にございませんっ!

 どうやら、自分が熱烈に蘇芳を好きで、婚約者を捨てても、蘇芳と結婚したいと言ったという話になっているようだった。

 なにがっ?
 どう曲がりくねったら、そのようにっ?

 しのぶにそう目で訴えたが、逆に目で脅される。

『いいから、貴女は黙っときなさいっ。
 私が上手くまとめるからっ』

 ――という目だった。

『でも、お義母様っ』

『貴女が蘇芳を好きで、心酔していると万里子さんに植え付けるのよっ。
 ばあさんなんて、みんな、孫を評価してくれる人間には寛容なんだからっ』

『でも、お義母様っ』

 そこで、後ろに控えていた宮本がぼそりともらした。

「すごいですね、唯様。
 もう奥様と以心伝心、会話できるとは……」

 いえ、恐怖のあまり、相手の心をなんとか読み取らねばと思っているだけです、と唯は思っていた。