その恋、記憶にございませんっ!

 




 蘇芳さんのおじい様の家に行くまで、蘇芳さんと結婚するとか言ったら、きっとお義母様に殺される。

 そう思っていました。

 でも今は、蘇芳さんと結婚しないと言ったら、息子をもてあそんだ罪で、やっぱり、殺される。

 そう思っています。

 っていうか、その死体すら、
「可愛い孫になんてことをっ」
と万里子さんに塔から投げ捨てられそうな予感がするのですが、気のせいでしようか。

 そんなことを考えながら、唯は震える手でカップをつかんでいた。

 目の前では、和やかなお茶の時間が繰り広げられている。

「ねえ、唯さん」
と穏やかな笑顔と口調で、万里子は話しかけてくれるが、先程、蘇芳に聞いた、迂闊なことを言うと、殴り殺される話がずっと頭を回っていた。

「それにしてもこんな可愛らしいお嬢さんが、そんな情熱的に蘇芳をねえ」

 万里子のその言葉に、唯は固まる。

 緊張もあって、みんながなにを話しているのか、さっぱり脳が理解できないでいたのだが、今、できた。