その恋、記憶にございませんっ!

 その姿を見ていた蘇芳の母が、いきなり、
「じゃあ、本田結婚しなさい」
と言い出す。

 はいっ? と裏返った本田の声がした。

 いつの間にか、後ろに居たらしい。

「あの娘、若くてイキのいいイケメンなら、なんでもいいらしいから」

「なんなんですかっ。
 さっきから繰り返されるそのフレーズはっ」
と本田が叫ぶ。

 いや、さっきより、条件増えてるし……。

 イキのいいって、と思う唯の後ろで、本田が泣いて訴えている。

「なにか僕の頭の中では、巨大なガマみたいなのが口開けて待ってますよっ?」

 いや、どちらかと言えば、若い男をとって喰らう鬼婆が、包丁研いでる感じなんだが。

 息子さんをどんな人と結婚させようとしてたんですか、お義母様、と唯は思っていた。

「唯様っ、助けてくださいっ」
とまた、雇った覚えのない使用人が助けを求めてやってくる。

 どうでもいいが、何故、みんな蘇芳さんのところに行かない……。