その恋、記憶にございませんっ!

「あの人はめんどくさいのよ」
としのぶは溜息をつく。

 どうやら、蘇芳にその結婚相手を紹介したとかいう友だちのことのようだった。

「あの娘、若くてイケメンなら、なんでもいいらしいから。
 あら、名前はなんだったかしらね。

 まだ会ったこともないから」

 いや、婚約してたのに、会ったこともないとかあるんですか、と思っていると、宮本がこちらを振り向き、言ってくる。

「た、助けてください、唯様」

 し、使用人を守るのも主人の役目。

 いや、雇った覚えはないのだが、なんだかいつの間にか、魂の主従関係みたいなのが出来ているので、助けねばなるまい。

 唯は、宮本を守るべく、彼の前に出た。

 ほう、という顔をしのぶはする。

 最早、しのぶが、恐ろしい魔女かなにかのように唯には見えていた。

 姑というのは、どんな人でも、嫁から見たら、魔女に見えるものなのだろうかな、と思いながら、唯は蘇芳の母を見返した。