その恋、記憶にございませんっ!

「聞いてなかったわね?」
と脅すように言われる。

「え、いえ……」

「私は取り繕う人間は嫌いよ。
 唯さん、正直にお言いなさい。

 貴女、なにを考えて人の話を聞いていたの」
と威圧的にしのぶが言ってきた。

 嘘などつこうものなら、この塔の上から突き落とされそうだ。

「おっしゃい。
 今、私が叱っている間、なにを考えてたの?」

 そう詰問され、唯は青褪めたまま、今、思っていることを正直に言ってしまった。

「殺される……」

「殺しません」

「いたぶられる……」

「いたぶりませんっ。

 蘇芳っ。
 なんなの、この子はっ」

「すみません」

「何故、宮本が謝るのっ」
と言ったあとで、

「そういえば、お前の元々の主人は、この唯だったわね」
と言う。

 いや、どっちかと言うと、お父様がですが、と思っていると、しのぶは宮本に向き直り、

「では、お前が責任をとって、蘇芳の婚約者と結婚しなさい」
と言い出した。

「はいっ!?」
と宮本がらしくもない声を上げている。