その恋、記憶にございませんっ!

 蘇芳は祖父と母を見、
「連れてきましたよ。
 前田唯です」
と唯を紹介する。

 初めまして、と唯は頭を下げた。

 そういえば、なんで私はこの人たちに挨拶しているのだろうか。

 別に蘇芳さんと結婚したいとか言うわけじゃないのに、と往生際悪く思いながら。

「そう。
 こんにちは。

 私が蘇芳の母、三上しのぶです」
とまったくなにも忍びそうにない顔で蘇芳の母は言ってくる。

「そして、こちらが蘇芳の祖父、清彦(きよひこ)」

 祖母は今は居ないようだった。

 しのぶは後ろを振り向き、
「宮本」
と呼びかけた。

 えっ? 宮本さんっ? と思ったそのとき、宮本が奥の部屋から現れた。

「私がお前たちを呼んだと聞いて、心配してきてくれたようよ。
 感謝するのね」
としのぶが言う。

 見慣れた人の姿を見て、唯がほっとしたところで、しのぶが唯を向いた。

「貴女が前田の姫様ね。
 まあ、可愛らしい顔をして、婚約者が居る男をとろうだなんて」

 唯は無言で首を振る。