その恋、記憶にございませんっ!

 



 どうしよう。
 なんだかすごい人が居ます。

 最上階の見晴らしのいい部屋にたどり着いた唯は固まる。

 椅子に座っている品のいいご老人と。

 その後ろに素晴らしく美しい女性が――。

 女性は、蘇芳の祖父らしきその老人の後ろに、控えているかのように立っているのだが。

 何故だろう。

 蘇芳の祖父よりも威張っているように唯には見えた。

 蘇芳さんにそっくりだからだろうかな、と思いながら、挨拶しようとすると、その大柄な美人は軽く腰を屈め、蘇芳の祖父にこちらを見ながら耳許でなにかを囁いた。

 単に、蘇芳たちが来ましたよ、と言って微笑んでいるだけなのかもしれないのだが。

 唯の目には、なにか悪いことを吹き込んで、ふふふふふ、と笑っているようにしか見えなかった。

 私の魂が穢れてしまったのでしょうかね? と思いながら、唯は固まる。